1章

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将来は弁護士になりたい、などとたいそうな夢を語る妹は、我が家の期待の星だ。 自慢じゃないけれど、あたしがこれから通う大学もそこそこ名が知れている。 しかし両親はあたしがどこの大学に行こうが特に興味を示さない。 それも仕方のないことだと理解している。 将来有望な妹を溺愛する両親の気持ちもよくわかっているつもりだ。 あたしはいつからか、諦めることを覚えた。 どんなに頑張ってもどんなに努力しても、いつも彼女には敵わない。 出来の悪い姉。 いつか当然のようにはりついたレッテル。 贅沢なんて言わない。 あたしは両親に、個人として見てもらいたかっただけ。 “三枝真子”として、認めて欲しかった。 ただ、それだけだった。
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