1340人が本棚に入れています
本棚に追加
駅は人で溢れていた。
右を見ても左を見ても人で埋めつくされている。
この非日常な空間が、あたしにも当たり前になると思うと興奮した。
田舎では味わえないことが、この街の普通なのだ。
慣れないながら乗換えを数回繰り返し、歩くこと数分、目的地のマンションの前に到着した。
「早かったな」
マンションのエントランスから声が聞こえた。
「待っててくれたの?ありがとう」
彼は白い歯を見せて笑う。
「忙しいって言ってたから、来てくれないかと思ってたよ」
「一人でも多いほうがいいと思って、昨日徹夜したからね」
少しクマの残る目元に小さな皺が寄る。
あたしはこの優しい皺が大好きだ。
最初のコメントを投稿しよう!