1章

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彼の名前は名取司。 ひとつ年上で、医学部に通うあたしの彼氏。 彼は隣の高校に通っていた。 使う駅が同じで、気づくとよく目があっていた。 告白は司からだった。 一年間の遠距離を越え、今日からこうして近くに住めるようになった。 「そろそろトラック来る頃だよな?」 司は時計を確認する。 「うん。もうすぐだよ」 あと十分くらいだろうか。 「あ、あたしそこのコンビニで業者の人たちに渡すコーヒーでも買ってくるよ」 「じゃあ俺にもコーヒーよろしくね」 「了解」 司に背を向けて歩き出すと同時に、手にしていたはずのバッグがないことに気がついた。 「まさか」 ついさっきまで大切に抱えていたはずなのに。
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