2章

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「はじめてだね。体売ったの」 お互い黙っていると、しばらくして柚希が沈黙を破った。 「何だか嘘みたい」 これは事実だった。 ついさっきの出来事なのに、まるで現実味がない。 直後にあった下半身の倦怠感も、ゴワゴワしたパンツの感触も、今は何も感じない。 「終わったあとは最高に虚しいけど、お金貰った瞬間そんなこと一気に吹っ飛んだよ」 柚希は笑う。 また、泣きそうな顔で。 「柚希だけじゃないよ。あたしもそうだった」 ほんの数時間我慢するだけで、あんなにたくさんのお金を手にすることができる。 バッグの底で眠る封筒を握ると、そこにはたしかにお札の感触がした。
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