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大学もついに夏休みになった。
田舎では毎年嫌でも耳に響くセミの鳴き声が聞こえない、はじめての夏。
あたしは司に内緒でキャバクラと愛人を続けている。
石田さんは初めてあたしを抱いた日以来、司の名前を呼ばせない。
それは何より嬉しいことであったけれど、司に対する罪悪感が日増しに薄れていくのを感じている。
それはそれであたしを苦しめた。
石田さんとは週に1回程度一緒に食事をしてマンションに向かう。
時々買い物をし、プレゼントしてくれた。
セックスは至ってノーマルだったけれど、経験豊富なだけあってあたしは毎回意識を手放してしまう。
石田さんとの関係が“当たり前”になっていく。
司にはバレなければいいんだ。
このままうまくやっていける。
そんな自信さえ芽生えはじめていた。
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