3章

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夕方店に出勤し、ドレスに着替えヘアメイクをする。 全身鏡でメイクを念入りにチェックし、着飾った女たちが並ぶ待機席に座った。 お盆も近いというのに客は後を絶たない。 こんなところで若い女と飲んでいないで家族サービスでもすればいいのに、なんて毒づいてみる。 あたしたちはここに来ている男たちのお金から給料を貰っていることを、ついつい忘れてしまう。 フリーの席をいくつかまわり、当然のように名刺も渡さず席を立つ。 客を掴む気は完全に消え失せていた。 「今日は良さそうな奴についた?」 自慢ばかりする若者二人組のフリー席から待機席に戻ると、柚希が小声でささやいた。 「ううん。全然ダメ。満足にドリンクも飲めなかったよ」 「つかえない奴らだね」 柚希は軽く舌打ちをし、店内を見渡す。 「今日も収穫なしかあ」
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