3章

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「司くんにはバレてない?大丈夫?」  柚希は時々こうして司のことを心配してくれる。 「ありがとう。全然気づいてないよ」 司にだけは絶対に知られるわけにはいかない。 「いらっしゃいませ」 威勢の良い黒服の声が店内に響いた。 せっかく待機してたのに。 あたしたちはソファーから腰をあげ、背筋を伸ばして立ち上がった。 店に入ってきたのは4人の男性で、見るからにお金を持っていそうだった。 仕立ての良さそうなスーツに、オシャレな革靴。 ちらりと覗かせる、数百万の時計。 ああ。 お金もってるんだな。 ひと目でわかる。 真っ直ぐVIP席に進む彼らの中の、チョコレート色のスーツを着た30代半ばくらいの男性と目があった。 漆黒なその瞳に、 吸い込まれるような感覚に陥った。
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