3章

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「ご指名ありがとうございます」 緊張する胸を抑えペコリと小さくお辞儀をし、チョコレートの彼の隣に座る。 「間近で見たほうが何倍も可愛いね」 それが、彼の第一声だった。 「ありがとう」 可愛いなんてこの仕事をはじめてから耳にタコができるほど言われているせいか、何も感じない。 簡単にいえば挨拶みたいなものだ。 そう思っていたのに、彼は違った。 恋を覚えたばかりの小学生のように瞳を輝かせ、熱い眼差しであたしを見つめている。 何だか気まずい気持ちになる。 「おいくつなんですか?」 彼から目を剃らし、酒を作りマニュアル通りの会話をする。 いや、実際に年齢が気になった。 遠くで見たときは30代だと思ったけれど、目の前にして思う、彼はもっと若い。 「27歳だよ」 ああ、やっぱり。 これはダメだ。 パパになんてならないだろう。
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