3章

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数日後、どうでもいいフリー席からようやく待機席に戻って来たあたしに、黒服が言った。 「指名です」 めんどくさいなと思いつつ席にいって驚いた。 相手はともくんだったのだ。 「もう来ないかと思ったよ」 客にする気がなかったあたしは、お礼のメールすらしていなかった。 失礼極まりない。 「連絡しようかと思ったんだけど、突然来たほうがビックリするかと思ってね」 ともくんは目尻に薄いシワを刻み、笑う。 「うん。ビックリしちゃったよ」 その日は適度に混んでいて、それなのにまったく働く気が起きないでいたから、ともくんが来てくれて助かった。 色々なフリーの席につくよりも指名客のほうが楽なのだ。 「好きなもの飲んでよ。フードも適当に頼んでいいからね」 「ありがとう」 お金があるって素晴らしい。 財布の中身を気にせず飲み食いできるんだから。
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