2章

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「いやあ、本当に見違えたよ」 胸に大きなリボンを拵えた淡いグリーンのロングドレスを着たあたしの肩をポンと叩く、黒服の男性。 一ヵ月前、店の前であたしに声をかけ、この店に入店させた張本人だ。 「俺の目に狂いはなかったね。一目見たときから愛音は売れると思ったよ」 「またそんなこと言って」 あたしは頬をゆるませて笑う。 ここにいる人間たはあたしを愛音と呼ぶ。 愛音(あいね) あたしの源氏名だ。 この名前がぴったりだと店長にすすめられて決まったのだけど、愛を奏でる音だね、とお客さんに言われてから、この名が好きになった。
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