プロローグ

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「嘘、嘘。冗談だって!オイラはお頭と違ってシャルディ一筋だから!」  慌てて否定するが、シャルディは信じた様子もなく疑惑の眼差しを向けている。 「ったく、どいつもこいつも。男の人って本当に美人に弱いんだから!どうせ私は美人じゃないわよ!!エディがそのつもりなら婚約は破棄しましょ」  シャルディはそのまま飛び出しそうな勢いで捲し立てる。  そう、実はこの伯爵令嬢・シャルディとお頭ことエドワードは婚約中のラブラブカップル…なのだが、とある事件からケンカ中だ。  何が起こったのかって?  実は事の発端はというと数日前に遡る。 ***  その日の夜、カタルナ号では新しく乗船することになったエドワードの義弟であるアンドリューの歓迎パーティーがささやかながら開かれていた。  この船の船医であり、コックでもあるノチェスの絶品料理が振る舞われ、テーブルにはいつもよりも少し高い酒が並んだ。  おかげで船員たちはみんなほろ酔い、いい気分で船に揺られていた。  そんな中、唐突にエドワードの叫び声が船内にこだまする。 「どうした!?」  心配したみんなが集まると、視線の先には思いがけぬ光景が広がっていた。 「にっ、にっ、人魚が釣れた!」 「は?人魚!?」    なんと、エドワードが海から人間を釣り上げたのだ。  しかも、人魚と見間違えるほど美しい少女を。  これにはみんなして開いた口が塞がらなかった。  とはいっても、みんなは呆れた様子で特に取り乱したりしなかったし、意外と冷静な態度のままだった。  普通だったら到底ありえない出来事なのだが、以前からエドワードにかかるとしばしばありえるのだ。  酔っぱらった彼の悪い癖で妙なものを船に持ち帰り、みんなを驚かせたのは一度や二度の話ではない。 「カタルナ号の七不思議だ」  そういってフィリップはため息をついたが、かといって彼女を海に返すわけにもいかずカタルナ号で保護することになった。  と、まぁここまではいいのだ。  問題はこの後の話。
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