悲しみを溶かすにはどんな熱が必要なのだろう

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風邪をひいた。こほんこほん、と漫画でありきたり音みたいな濁った咳がでる。夏のこんな暑い日に風邪なんてひかないとたかをくくっていた。所謂夏風邪、というものだ。高校生のときみたいな気楽な単位の心配はしない。この休んだ1時間1時間は大きな意味をもって、単位取得の為のテストに影響する。それ以前に再テストに3000円もお金をかけるのは嫌だった。だから、あたしは熱があっても絶対に学校に行くのである。 「真凜~、どうしたのそのマスク!」 「風邪とか珍しい~」 あたしもびっくりしたよー、と言いたくても声がでないから、ジェスチャーで声がでないことを伝えると「声でないの!?」となおびっくりされた。びっくりしてるのはあたしも同じである。 「大変だね~、なんかあったらいつでも電話して! ご飯作りにいくよ!」 「お大事にー!」 ありがとう、とジェスチャーで表し友人達は次の講義に向かって行った。私は次の講義は友人達と違い、隣の棟まで行かなければならないので元来た道に背を向け歩く。立海大は中高大とエスカレーターでくる人が多い。私もそれだった。しかし、うまく馴染めず友達もいるんだかいないんだかよくわからない種類の人間だった。
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