悲しみを溶かすにはどんな熱が必要なのだろう

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腫れ物でも目立っているでもない、ごく普通の、本当に普通であった。だから、中学からいるのに同級生に「外部から入ったの?」とよく言われる。大学に入ってからだ、こんなに人とコミュニケーションをとるなんて。自分でも不思議に思う、大学もバイトもサークルも親に無理言って頼み込んだ1人暮らしも楽しい、少し満足してる生活を送っている。 「あ、阿彦、」 「にお、う」 「なんじゃその声」 同じ薬学部で中学からの数少ない友人の1人である仁王が後ろから声をかけてきた。ここに来るまでたくさんの人に説明した、少し疲れた顔で簡単に声がでないことを表すと、「ばかも風邪ひくんじゃのう」とばかにされた。なにこいつ。その綺麗な顔に塩酸をぶっかけてやろうか、と紙に書いて渡したら「綺麗な顔かあ、うれしいのう」。論点が違う。だが、それは否定できない事実である。中学から人気であった王者立海テニス部のレギュラーとして詐欺師の異名をもつ彼はひどく人気であった。その微妙な方言とブリーチして痛みきった銀髪、全てにおいて謎であることから、非常にモテたのである。私にはそれが不思議でたまらなかった、こんなやつのどこが恋愛対象になるんだろう、と。
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