悲しみを溶かすにはどんな熱が必要なのだろう

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屋上でサボる、なんて夢のまた夢の話だ。基本屋上なんて鍵がかかってしまっている。それに屋上なんて雨風雪のせいで絶対汚いんだからそんなところに座る気も起きない。大体中学の屋上にすら1回も入ったことないのだ。高校も1回も入らないで卒業してしまうだろう。だから私のお気に入りのサボり場所は図書室でも保健室でも空き教室でもない、屋上まで続く階段の最上段だ。ここなら、先生方の足音は聞こえるけど、決して来ようとは思わない薄暗い場所でお気に入りだ。それでも屋上に続く、というところはやはり屋上で1回はサボってみたい、という無意識的な意思があるのだろうか。少し早いコンビニで買ってきた贅沢ミルクフランスパンを頬張りながら考えていた。だからだろうか、人の足音に気付かなかったのは。 「…こんなところでなにしとるんじゃ?」 どこの方言だかわからない曖昧な言葉が聞こえてきた。びくっとして顔を上げると同じクラスの腐れ縁で一応先月彼氏に昇格したやつが私を見下すように立っていた。ちなみに告白したのはあっちのほうだ。私のふらふらしたところがいいらしい。わけわからない。まあ、それと付き合ってる私もわけわからなおんだけれども。「なにしとるんじゃ?って言われてもサボりだけど」「それは知っとる。」「わかってんじゃん。」「うん。」わかってくるならきいてくるな。会話したあと仁王は私の隣に座ってきた。無言が続く。数分後、ちらと横をみると仁王も誰かにメールをしているらしくケータイをぽちぽちといじっていた。まあ、いいか。とケータイといじり直す。すると、ぶーぶーとケータイのバイブをみる。誰かからめーるが着たようだ。…仁王だ。こんな近い距離にいるなら会話すればいいのに、と一応メールをみてみる。
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