悲しみを溶かすにはどんな熱が必要なのだろう

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『なんで屋上いかんの?』 『鍵が開いてないから』 『鍵なら俺がもっちょる』 「え?」 ん?、と効果音がつきそうなほどにやにやした仁王はこちらを見ていた。だからこいつ、最初になにしとるんじゃ?って聞いたのか。なんか悔しい。 「…屋上いくろ?」 「うん、行きたい」 念願だった、屋上でのサボり。まだ授業終了まで30分ある。ぎぃ、と古びた扉をあけると真っ青な光と風がぶわあと入ってきて目が眩んだ。それでも一歩一歩進んでいく。次第に光に目が慣れて、一面を見渡す。そこは想像してたのと同じくらい汚くて、想像以上に綺麗な空といつもの街並みが流れていた。仁王はどこから持ってきたかわからなきブルーシートを敷いて寝っころがっていた。「あたしの分は?」「俺の隣。」「…うん。」素直に仁王の隣に寝た。すると仁王は猫みたいに抱きついてきた。すこし驚いたけど、ぽんぽんと頭を撫でると喜んだように目を細めた。 「今日、天気いいし、お前にこれを見せたくてブルーシートも鍵も用意したんじゃ。」 「そっか、ありがとう」 驚きの表情をみせると、彼はなお喜んだようにぎゅう、とさらに強く抱きしめてきた。苦しかったけど、それ以上に幸せだった。あぁ、よかった、あたしは彼がきちんとすきなんだ。好きと友情との間に挟まってた私の気持ちはやっと濃縮された気分になった。鍵はどこから拝借したんだとかたくさん聞きたかったけど、それは後にしよう。今はこのままにしていたい。 「仁王、すきだよ」 私から初めて言った。仁王はひどく驚いた顔を一瞬したがすぐに顔色を変え、他人にはみせないような甘い笑顔をみせた。 「俺のほうがすきじゃ」
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