第1章__桜

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呼吸が、止まりそうだった。 ハッと、我に帰る。 お辞儀をし、舞台から降りる。 何事もなかったように、自分の席に戻ってから、私はもう一度、深く息を吸った。 目を閉じて、さっきの情景を思い浮かべる。 淡い、琥珀色の瞳が、私を見ていた。 獣のように、獲物を捕らえるような目。 どこか優しい感じだったけど、硬直して、身動き一つとれなくなるような緊張感。 思い出すだけで、身震いするような。 ――甘い、甘い一時。――
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