好きになるのはずっと後でいいと思うの

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 授業ともなれば机に座って液晶パネルを見下ろしながら教師の説明を聞き、タッチパネルで文字を記入していく。正面の巨大スクリーンにも同じ液晶パネルがあり、全てこちらのディスプレイが監視されている。  最も一つの教室には三十人ほどの生徒が敷き詰められ、そのほとんどが女子生徒だった。  圧倒的男子数の低下に伴う強制処置として、どこからか送られてくる行動決定メールには婚姻推進メールが混じっていた。  クラスメートたちの中には既に何人かの男子に会っている者もいたが、既婚率は低かった。高校生で結婚しろと言うのも風俗的な意味合いでどうなのだろうか、と思いつつ、いざ自分の手元にそれが到着するとなると驚きだった。  山中にある都会とは真逆の山と田畑しかないこの環境でもこの管理委員会からのメールは届く。それが当たり前で普通のこと。  大和は青い手の平大のPDAをタップしてメールの内容を確認する。  十六歳の誕生日、おめでとうございます。  件名はそれで始まり、続いて本文にはこうあった。大和(やまと)は小さな声でそれを読み上げる。 「貴方の遺伝情報を元より推奨される女子個体候補が見つかりました。おめでとうございます?」  人を何だとおもっているのか、と呆れるような文面ではあるが、これがなかなか、相手を見つけられない女子には嬉しいものだと耳にしているから大和からしてみれば驚きだった。 「貴方のお相手は架陵院璃暖(かりょういんりのん)さんです、連絡が一件届いています。連絡先としてご登録されると相手側にも貴方の情報が送信されますがよろしいですか?」  相手のメール、璃暖の件名だけが見えていた。 「一度だけでいいので声を聞かせてください」  意味深な内容に大和は授業中であることも忘れてその真意を考え込んでしまった。
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