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童顔で幼い声、身長は百五十二センチで可愛いとまで言われてしまう、コンプレックスになってしまいそうな感じだった。
男としてみられていないのは昔から慣れているし、男女比率一対七の社会で第二種人権を与えられているのは女子に比べたら優遇はされている。
「可愛いのは罪じゃないさっ」
落ち込んだ大和に瀬霞は大和の後ろに回り再び体を密着させて、腕を回してPDAを二人で見えるように腕を伸ばす。大和は頭を瀬霞に預けるようにしてゆったりとしている。
周りの女子からして見るとまるで交際している男女のように見えなくもない。
「んー?大和を狙ってる淫乱女子はどいつかなー?」
瀬霞が面白がってメールを勝手に閲覧して笑顔のまま硬直し、大和もふっと鼻で嘲笑するように笑った。
まぁ信じられないだろうね。
「大和が私を捨てるうううううっ」
瀬霞が突如として発狂し、PDAを放り投げて走り去り、大和は落ちて来たPDAをキャッチしてため息を吐いた。
いつものことなので周りは対して気にしていないが、数名の女子が瀬霞を追いかけて教室を出て行く。何だかんだでクラスの団結力は校内でも一番なクラスということだ。
大和がPDAを眺めてどう返信するか悩んでいると、そっと大和の前に柔和に微笑み、両手を前で組んでいる蓮娜が大和を見下ろしていた。
「私も気になるなー。瀬霞が負けを認める相手なんてそういないよー」
終始のんびりとしている口調で一度怒らせてみたいと思えるような暢気な蓮娜(はすな)に大和はうん、と小さく頷いてから、登録したばかりのアドレスとコールナンバーの上に表示されている架陵院璃暖の名前を見せるとさすがの蓮娜も納得と驚きの合間ったような表情、にはならなかったが、先ほどとさして変わらない柔和な雰囲気のまま「あらあらまぁまぁ」と小首を傾げていた。
実の姉ほどではないがクラスの優しいお姉さんとして認められる彼女の銀色のメガネがきらんと光ったような気がして、大和がPDAを隠そうと両手で握り締めようとしたが、既にそれは叶わなかった。
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