出逢い

2/4
前へ
/19ページ
次へ
「ったく、靴びしょびしょだな。コンビニ傘ちっちぇし」 原田株式会社の社長──原田左之助──は自分で立ち上げた会社が徒歩20分の為毎日歩いて通っている。 おかげてオーダメイトの革靴がびしょびしょだ。 「ま、明日行ったら休みだしなぁ。頑張っかな」 うしっ。と自分に渇をいれ、行きも帰りも通る公園でふと足が止まった。 ──あれは……人、か? 電柱がジジジと鈍い音を立て、とても明るいとは言えない照明の中の公園……いや、公園の中にあるベンチに人がいる。 ──しかも、影から見て女だな。このどしゃ降りの中で傘も差さねぇで何やってんだか……。まあいい、傘渡してさっさと帰ろう。 雨で湿った土を踏みながら女の元に近づく。 「おい、こんな時間に何やってん……」 「っ、だ、誰!?」 「俺は原田左之助。どうした? こんな夜中に一人で?」 ──できる限りの優しい声で。 「……私、家出してきて……」 「……なんでだ?」 「……父が……」 それまでいうと細い肩を震わせて黙ってしまった。 ──家庭内暴力か。それとも性的暴力、精神的暴力……? 「とりあえず家に帰れ」 「……嫌です」 ──この野郎(怒) バックから携帯をだし「親御さんの電話番号は?」と聞けば「嫌です!! やめてください!!」と声をあらげた。 ──ラチがあかねぇ。 「……わかった。とりあえず俺ん家に来い。家出したとしても雨で風邪ひいて困るのはてめぇだ」 「……お邪魔します」 ──どうやら、性的暴力の類いではないらしい。まあ、さっさと家に帰すか。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加