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「ったく、靴びしょびしょだな。コンビニ傘ちっちぇし」
原田株式会社の社長──原田左之助──は自分で立ち上げた会社が徒歩20分の為毎日歩いて通っている。
おかげてオーダメイトの革靴がびしょびしょだ。
「ま、明日行ったら休みだしなぁ。頑張っかな」
うしっ。と自分に渇をいれ、行きも帰りも通る公園でふと足が止まった。
──あれは……人、か?
電柱がジジジと鈍い音を立て、とても明るいとは言えない照明の中の公園……いや、公園の中にあるベンチに人がいる。
──しかも、影から見て女だな。このどしゃ降りの中で傘も差さねぇで何やってんだか……。まあいい、傘渡してさっさと帰ろう。
雨で湿った土を踏みながら女の元に近づく。
「おい、こんな時間に何やってん……」
「っ、だ、誰!?」
「俺は原田左之助。どうした? こんな夜中に一人で?」
──できる限りの優しい声で。
「……私、家出してきて……」
「……なんでだ?」
「……父が……」
それまでいうと細い肩を震わせて黙ってしまった。
──家庭内暴力か。それとも性的暴力、精神的暴力……?
「とりあえず家に帰れ」
「……嫌です」
──この野郎(怒)
バックから携帯をだし「親御さんの電話番号は?」と聞けば「嫌です!! やめてください!!」と声をあらげた。
──ラチがあかねぇ。
「……わかった。とりあえず俺ん家に来い。家出したとしても雨で風邪ひいて困るのはてめぇだ」
「……お邪魔します」
──どうやら、性的暴力の類いではないらしい。まあ、さっさと家に帰すか。
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