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朝、俺はそう告げて家を出た。
昨日はとりあえず俺がソファーで寝たから良いものの、長らくそうするわけにもいかない。
──明日の休日は買い物でつぶれたな。あー、まぁいいか。靴も乾いてるし。
「ま、いいかな。久々に羽伸ばすか」
うーん、と両手を伸ばすと。
「おい」
後ろから声をかけられた。後ろを見ると日光を浴びてキラキラ光る金髪がいた。
「よっ、風間。今日はサボりじゃないんだな」
「ふん。今日は出勤する気分なんだ」
風間千景、俺の一番部下だ。だが、こいつの姿を見たのは久々だ。
「気分で出勤するなよ」
「溜まっている書類は今日片付ける」
「かなりの量だぜ?」
ふん、と鼻で笑うと「甘くみるな」と言われた。
「どうした? なにやら浮かない顔をしているが、下らない悩みか?」
「いや、下らなくはないんだが……。子猫を拾ってな」
風間は俺の言い方で(おそらく)察したであろう。
「その子猫をどうしたらいいもんかと……」
「俺なら」
「ん?」
「俺なら飽きるまで飼うがな」
それだけ言うと眼前に見えていた会社に入って行ってしまった。
「飽きるまで飼う、な……。それもまた一興だがな」
──とりあえず、この件は保留で。
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