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「お疲れさまでした、社長」
「おう。気ぃつけて帰れよ」
帰宅の時刻になり次々と帰っていく社員を見送り、隣にやってきた風間に「なんだ」と短く声をかければ。
「終わった。書類の確認をたのむ」
「ああ、って。終わったのかよ!!」
「ああ、そうだ」
短く答えればさっさと荷物をまとめて帰っていった。……またしても俺は残業らしい。
「ったく、社長を駒使いすんじゃねぇよ……」
時計の針は8時を回る。帰れんのは11時過ぎるかな、と他人事のように考えた。
書類確認、書類確認、書類確認、書類確認、書類確認……。
「チッ……風間の奴書類貯めすぎなんだよ!!」
時刻は10時43分……、帰ろう。もう確認する気力がねぇ。帰宅に20分かかるとして……11時過ぎるな。
俺は盛大にため息を吐いた。
──ガチャ
「ただいま」
──っと、起こしたか?
耳を済ませてみても何も聞こえない。安堵して寝室を見に行くと、丸まって寝息をたてていた。その緩やかに上下に動く頭を一撫でしてから「明日は買い物だぞ」と呟いてソファーに向かった。
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