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「発作が起きていたら、天野さんでは何も出来ません」
「……」
「僕がキョウを手伝いますから、貴女は待っていて下さい」
「……でも」
次の言葉を発する前に、佐原くんは階段を昇って行く。
その後ろ姿を追うことも出来ず、私はただ立ち尽くした。 二階へと続く道を見つめたまま。 ただ、じっと。
玄関脇に置いてある私の荷物へと視線が移る。
鞄にも付着した血液を見て、あることを思い出す。
すぐに鞄を手に取り、中をまさぐった。 泥が付いたせいでザラザラとした教科書やノート、筆箱以外中には入っていない。
嘘、じゃあ、あの場所に……。
力なく壁へともたれかかり、鞄を足元へと落とす。
コンクリートの汚れで黒ずんだ膝を見つめながら、自然と出るため息に肩を上下させた。
「汚いな、私」
身体のあちこちに付着した血液やドロが目立つ。 ……洗わなきゃ。
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