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零に発作が起きたら、私が何とかする。 薬を飲ませて、絶対に人を襲わせたりしない。
そう心に決めていた。
けど――もし薬を飲ませられなかったら?
もし零が襲って来たら?
もし、もし血を吸われたら?
「……」
自然と唇を噛み締める。 ギリギリと、強い力で歯を突き立てる。
ドロジーに手足も出なかった。 ただ怖くて、怖くて。 光る牙が恐ろしくて。
何も出来なかった。 何も、何も変えられなかった。
残ったのは、痣と傷。 後悔。 現実。
「……こんなんじゃ、零を守れないよ……」
シャワーの水と共に流れ落ちていく私の言葉。
たった一人の弟。 たった一人、血の繋がった家族。
私の大切な……ヒト。
「守れないなら、家族なんかじゃないじゃん……」
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