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「……」
金に光る視圧。 それが私の時間を一瞬止めた気がして、次に紡ぐ言葉を飲み込んだ。
佐原くんに促されるまま椅子へと座る。
用意されていた救急キットを素早く開き、キョウが手当てを進めて行く。 踏みつけられた手甲は、青黒い痣へと変色していた。
そこを冷やしながら目を細めるキョウ。
「……依千」
キョウの低い声が響き、私は顔を上げた。
零が変貌した夜に聞いた、声。
「なぜ、お前がドロジーと接触した?」
そう問うてくるキョウの視線が、チラリと佐原くんに向けられた。 そしてすぐに私へと戻る。
「夢吉がいなかったら……どうなっていたことか……」
その目は少し潤んでいるように見えて、私は目線を下げた。
ごめんなさい。 微かにそのセリフを発する。
私がドロジーに襲われたまでの経緯を、キョウに説明した。
女のヒトの悲鳴が聞こえたこと。
路地裏に着いたら女のヒトが血を流し倒れていたこと。
女のヒトを襲った犯人がドロジーだったこと。
人間と吸血鬼の共存を説いたら、激怒したドロジーに……蹴り飛ばされたこと。
全て、話した。
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