誰にでも替えの効く日常

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見渡す限り、360度全てを覆い尽くすほどぎっしりと詰め込まれている人!獣!悪魔! まるで魔王と勇者が力を合わせて共通の敵を倒そうとしているかのような状況の中、一人の男がそのむさ苦しい円の中心に佇んでいる。 男は誰がどう見ても助かる見込みの無さそうな危機的状況にも拘わらず、ゆっくりとした動作で自分の左腰に掛けられている剣を鞘から抜く。 それだけの事で空気が震える。 大地が揺れる。 雷が轟く。 周りの兵士達は既に大多数がビビっており、今にも逃げ出しそうだ。 この男の出す闘気はそれほどまでに圧倒的なのだ。 だが、それにも恐れずに男の眼前へと進んで出てきた者が2人いた。 一人は身長が3mはあるんじゃないかというほどの見るからに危険そうな巨漢の男。 もう一人は綺麗に整った顔立ちを持ついかにも真面目そうな少年。 そう、魔王と勇者である。 「シーザー!!俺はお前の事を信じていたのに、どうしてこんなことをするんだ!?」 「貴様の力は危険過ぎる。この儂以上にな。故に、消させてもらうぞ!!」 勇者と魔王がそれぞれ男…シーザーに声を掛ける。 勇者とシーザーは元は仲間だった。しかし、あるときいきなりシーザーが仲間を辞めて世界征服する、と言い出し勇者とシーザーの仲は決裂していたのだ。 勇者の質問に対して、シーザーは当たり前の事のようにこう言い放った。 「えっ?だってそっちの方が面白いじゃん。」 「なっ!?お、面白い、だって?たったそれだけの理由で俺達を裏切ったのかよ!?」 勇者はシーザーの言葉に今にも切り掛かりそうだったが、 「はい。こんな茶番はもうおしまいですー。さっさとみんなをぶっ飛ばしましょー。」 というシーザーの言葉と同時にシーザーの持つ剣から光が溢れ出し、 「ファイルスラァァッシュ!!」 とシーザーが叫びながら自分を軸にして一気に一回転した。 それだけで周りにいた兵士達はホームランボールのように吹っ飛んでいった。 その中にはあの勇者と魔王の姿もあった。 こうしてこの世界は元勇者の仲間であったシーザーによって征服されてしまうのだった。
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