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「ただいまー…。」
ゆっくりと玄関の扉を開け、そろりと中に入ると階段を駆け下りる凄まじい足音が聞こえてきた。
足音は近づき玄関までやって来た。
「奈瑞姉!こんな時間まで何やってたの!?」
足音と共に現れたのは一歳年下の妹、蛍(ほたる)
今年春から高校生になったばかりで顔立ちはまだ少し幼いように見える。
「いや、散歩をね…。」
「危ないでしょ!?体弱いんだからさ!倒れたらどうすんの!?」
怖いぐらい目を見開いて問いつめられたため、勢いにおされて一歩下がる。
「大丈夫だって…。倒れはしたけど。」
蛍の見開かれていた目が更に開かれた。
この子いつか目が飛び出すんじゃないかなぁ。
「倒れたぁ!?どこで!?」
「神社の裏にある家の庭。あ、でも助けてもらったから。」
蛍は大きく息を吐きその場に座りこんだ。
この溜め息が呆れているのではなく、安心したという意味なんだということを私は知っている。
「お願いだから、もうちょっと自分の体気にしてよ。」
「ごめん、ごめん。」
苦笑しながら靴を脱ぎ居間へ向かう。
「ただいまー。」
夕飯の準備をしている母と、TVニュースをみていた父が振り返った。
「おぉ、お帰り。」
「お帰り、奈瑞菜。ご飯もうすぐだから着替えといで。」
「うん。」
居間を後にし2階の部屋に上がり制服を脱いだ。
「ねぇ、奈瑞姉?何で神社になんか行ったの?」
いつの間にか部屋に入ってきていた蛍が口を開いた。
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