白木蓮

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同じ場所をさっきから行ったり来たりと繰り返している。 かれこれ二十分くらいそうしていただろう。 目の前にあるのは二本の木の間にできた明るい小道。 この先に行けば昨日の男の人がいる和風の家と庭に辿り着く。 ここに来た理由はあの白い花が気になったということもあるが、あの男の人にもう一度会ってみたいと思ったから。 なんとなく気になった。 さらに十分程その場を行ったり来たりし、最終的に意を決し小道に足を踏み入れた。 あの花のある庭に出た。 昨日の夕方と違い、昼間の今の時間帯だとこの庭もまた違って見える。 「あ、あった。」 大きな白い花を咲かせた木を見つけて走りよった。 「あれ?」 木の様子が昨日と少し違う。 地面には大きな白い花びらが数枚落ちている。 視線をもう一度木に戻すと花びらが一枚落ちた。 「うわっ!」 その花の散り方といったら桜の花のように風に舞ってひらひらと儚く散るのではなく、花の重さのせいか何の前触れもなく地面に散った。 ボトリと音が聞こえそうな散り方だ。 散ったと言うより落下したと言う方が相応しい気がする。
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