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その場にいるわけにもいかなかったので素直に彼の後についていった。
縁側に座らされ待っていると、彼は桶ぐらいの大きさのガラスでできた皿を持ってきた。
中には水が入っている。
「その花、入れて。」
顎で両手に持っていた花を示されて慌ててカラス皿の中に花をいれる。
光でキラキラと光っている水に浮かんだ白い花は咲いているものとはまた違って綺麗だった。
「学校は?」
花の入った皿をコトリと置いて彼は私の隣に座った。
「今日は土曜日なんで休みです。」
「あぁ、そうか。」
さらりと風が頬をなでる。
皿の中の水が揺れて花もゆれる。
ちらりと彼を見ると何を考えているのかわからない瞳でじっと庭を見つめている。
白い肌、長いまつげ、形のいい眉に唇、どの角度から見ても見惚れる顔立ち。
流れた艶やかな黒髪はさわり心地がよさそうに少しふわふわしている。
なんて思ってた時だ。
「俺の観察はおもしろい?」
やけに耳に残るような低く落ち着く声で彼が囁いた。
見つめていたことを聞かれて身体中が熱くなる。
「ご…ごめんなさい。」
「何で謝る?」
「え?いや…。」
なんだか調子が狂う
どんなときでも自分のリズムでいたいのにこの人はそうさせてくれないみたい。
なんとなく気まずくなってうつむき目を泳がせていると、
「季乃之」
耳元で囁かれた低音に振り返ると、彼の顔が近くにあった。
近すぎて体が硬直してしまうくらい驚いた。
「き の ゆき?」
目をそらすことができず彼の発した言の葉をゆっくり復唱してみた
「そう。神谷 季乃之」(かみや きのゆき)
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