庭石菖

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時刻は四時過ぎ 掃除の終わった1年生の教室はしん、としている。 クラスメイトはほとんどの子が部活へ行き、他の子達はさっさと帰ってしまった。 「ついてない…。」 教室の真ん中の一番後ろの席で机に広げた日誌を睨み付ける。 日直である今日に限って、友達の優(ゆう)が先に帰ってしまった。 いつもなら待ってくれるのだが、今日は急ぎの用があったらしくさっさと帰ってしまった。 一人で帰るのが嫌いな私にとってこの現状は憂鬱なものだ。 奈瑞姉に待ってもらうという手もあったのだが、天音さんと一緒に帰っているのに入るのはなんとなく気がひけた。 「さっさと終わらせよ。」 担当と書かれた欄に'ほたる'とひらがなで書いた。 上から順番に授業の報告という空欄を埋めていると、前の扉が勢いよく開いた。 ビクリと大袈裟なほど体が震えてしまい、机がガタッと音をたて、その振動で机の端ギリギリに置いていた筆箱が見事に落ちた。 馬鹿なことに開けっぱなしにしていたため中のペンやらシャーペンがバラバラと転がっていった。 「うわわ!」 慌てて筆箱を拾い上げ、散らばったペンを拾っていると目の前にシャーペンが1本つき出された。
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