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職員室に日誌を置いて廊下に出るとなぜか樹がいた。
「い、樹く…樹、帰ったんじゃなかったの?」
危ない危ない。
さっき呼び捨てにしろと言われたばかりなのに「君」をつけそうになった。
「あー…、えーっと…あのさぁ…。」
チラッとこちらをうかがう仕草がどうしても可愛らしく見えてしまう。
こういう仕草が女の子の心を鷲掴みにするんだろうなと思っていたときだ。
「…一緒に帰らねぇ?」
「………は?」
「いや、だから一緒に帰らねぇか?って…。」
……聞きましたか?
一緒に帰ろうって言われましたよ?
一人で帰るのが嫌いな私に一緒に帰ろうという申し出。
「イヤなら…いいけどさ…。」
しゅん、という音が聞こえたような気がした。
「そんなことない!!一緒に帰ろう!」
勢いよく首を横にふったせいで変な音がした気がした、異常はなかったのでよかった。
「そ、そっか。じゃぁ帰ろうぜ。」
「うん。」
私の歩調に合わせてくれているみたいで、のんびりした足取りで外へと歩く。
外に出て校門を抜けると思いきや樹は自転車小屋に向かった。
「自転車で通学してるんだ。」
「うん。こっちのが楽だから。」
言いながら樹は私のスクールバックを奪い取って自転車のカゴの中に入れた。
樹はというと教科書なんて絶対に入りそうにない小さなバッグを肩から斜め掛けにしている。
自転車をついて一緒に門を抜け、足場の悪い下り坂を歩いた。
坂を下りおわると樹は自転車にまたがった。
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