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「後ろ、乗って。」
「……え?」
「乗れって。」
はやく、と急かすような目がまた可愛らしい。
って、そうじゃないそうじゃない。
「む、無理だって!だってコレってたしか10Kgぐらいの重さしか乗せれないんでしょ?そんなに軽くないって!!」
樹は何度かパチパチと瞬きをして吹き出したように笑った。
あ、笑顔も可愛い
「蛍ってさ、二人乗りしたことない?今時そんなの律儀に守ってる奴いねーって。」
「そ、そうなの?」
「あぁ。だから乗れって。」
そう言われて恐る恐る後ろにまたがってみる。
スカートがめくれ上がっていつもより足が見えてしまうのが落ち着かない。
「んじゃ、ちゃんと掴まっとけよ。」
ゆっくりとペダルをこぎ始め自転車が動く。
「おぉー…。」
初めての二人乗りにちょっと感動を覚えた。
でこぼこした道は思いの外怖かったため樹の腰にギュッとしがみついた。
「ちょっと怖いけど、やっぱり楽だね。私初めてなんだよ。二人乗り。」
「都会に住んでる奴って二人乗りしねぇの?」
「いや、してる人はいたけどさ、警察とか多いし汽車で通学してたし。」
「そっか。俺、女後ろに乗せたの初めてだなー。」
自転車をこいでいるから樹の顔は見えない。
でも優しそうに笑っているような気がした。
「てか、ねぇ?家どっち?」
「あっちー!!」
細かくて複雑な道で今日はなんかいいことあったな、なんて思いながら家へ帰る道を指差した。
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