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薄暗い道を自分では結構早い速度で走って石段を掛け上がって鳥居をくぐり、二本の木の間にできた小道を走り抜けた。
そして庭も走って、あの家の縁側までたどり着く予定だった。
歩いていたらまた、ここまで来るのに戸惑いそうだと思ったから勢いをつけてたどり着いてやろうと思っていた。
しかし、縁側までたどり着けなかった。
庭に入るところまではよかった。
庭に出て縁側まで突っ切ろうと思っていたら紅紫色の小さな花が目に写った。
しかも目の前にある。
とっさに避けようとしたが、そんな素早い動きが私にできるわけもなく、見事に転んで倒れこんだ。
すぐさま横をみると、なんとか回避できたようで花は無事だった。
「よかった…。」
ほっと息をついて上体を起こした。
立ち上がろうとして、花から視線をそらし前を向いた時、
あの人の顔があった。
「うわぁあっ!?」
驚きすぎて立ち上がろうとしていたのに尻餅をついた。
「元気だねぇ。走ったり転んだり、飛び跳ねたり。」
クツクツと喉の奥で季乃さんが笑う。
恥ずかしい
一部始終を見られていたのか
熱をもった顔を隠したくて俯いていると、耳に残る落ち着いた低い声が頭上からした。
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