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「今日も遊びに来てくれたのかい?」
「え…とっ。」
俯いたまま目を泳がせていると先ほどの花に目が止まった。
そうだ。あれだ あれ。
紅紫色の花を指差すと彼は、ん?と首を傾げて私の指をたどった。
「あの花のこと知りたくて。その、き、季乃さん知ってそうだったから。」
季乃さん と言ったら彼は口元に笑みを浮かべた。
嬉しそうに 楽しそうに
「あの花は庭石菖(にわぜきしょう)」
「にわ、ぜき?」
季乃さんは楽しそうに口元に笑みを残したまま教えてくれる。
「葉がサトイモ科の石菖という植物に似ていて、庭によく生えることからそう呼ばれるようになったらしい。この色以外にも白もある。学校で見かけた?」
顔を覗きこまれながら問われてまた後ろに尻餅をつきそうになった。
心臓の鼓動がまた早くなって必死に落ち着かせようと頑張っていたら、季乃さんが立ち上がった。
どうしたの?という意味を込めた目で見ると、季乃さんは気怠げに
「そろそろ仕事の続きをしなければと思ってね。」
と言った
どうやら休憩中だったらしい。
でも、仕事って何してるんだろう?
と首を傾げていると季乃さんが手招きをした。
素直についていき、縁側で靴を脱いだ。
季乃さんのあとを追いかけて夕日の差し込む廊下を歩いて居間と思われる部屋に入った。
中に入って唖然とした。
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