杜若

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「何してるんですか?」 「寝てる。」 「お仕事は?」 「もう今日はやめた。」 布と紙が散らばった部屋の中心で寝転がっている家の主を見てため息が出た。 「てゆーか、出したら片付けましょうよ。」 「それは君の仕事だろう。」 「なんでそうなるんですか。」 季乃さんの仕事を知って以来、ここに来ることが多くなった。 学校の帰り、休みの日にその日の出来事や花の名前など他愛もない話をするのが日常になってしまいそうだ。 「来るたびに私が片付けてますよ?ちょっとは自分でやってください。」 初めて来たときほどでもないが季乃さんの部屋はいつも散らばっている。 それを来るたびに私が片付けるのも日常になってしまいそうな五月半ばのこの頃。 ブツブツと文句を言いながら布をたたんでいると、すぐ後ろで背中を向けて寝ていた季乃さんがこちらを向いた。 「散らかしたら、君が次も来てくれると思ってね。」 楽しむように彼は口元に笑みを浮かべて言う。 その言葉に身体中が熱くなる。
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