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「…それは…大丈夫じゃないです!!」
紅が黒になりかけの空をしばらく見つめ、時間が確認できると無意識に叫んでいた。
まずい。これはまずい。
帰りが遅くなると大変なことになる。
門限などはないが、家には心配症の塊と言える人がいるため、早く帰らないと大変なことになってしまう。
「帰ります!ありがとうございました!」
縁側の下に靴が揃えられていたため、急いでそれを履く。
「途中まで送ろうか。」
私の返事も待たずにその人は靴を履きはじめたため、あの白い花びらを見つけた分かれ道まで送ってもらうことになった。
正直、送ってもらってよかった。
来たときは平気だったが、夜に近い時間帯の木々に囲まれた道を一人で歩くのは、なかなか勇気のいるものだっただろう。
「ありがとうございました。」
お礼を言って自分では急いでいるつもりの駆け足で家への道のりを走る。
「また、おいで。」
落ち着いた声で言われて一度振り返ると、その人は優しく微笑んでいた。
何故か恥ずかしくなって、曖昧に頷き再び走った。
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