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妻は冷静だった。何年も騙されてきたわけだから僕は殺されてもいいと思った。
妻は僕を責めなかった。それでも生活できるだけのお金をつくってきていた僕に感謝の言葉を言ったのだ。
「信頼の天才」
太宰治は「人間失格」の中でこの言葉を使った。また「ヴィヨンの妻」でも駄目な夫を持った気丈な妻を描いている。
僕はもう死にたい。生まれて初めて死を意識した。
ごめんなさいも出ない。腐りきった自分が本当に嫌になった。僕は本当に子供たちを愛しているのか。愛しているならそんな馬鹿しないよ。
僕はしばらく布団から起き上がれない体になった。
妻は何も言わなかった。
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