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鎌鼬と出会って2年。
私は、親に連れられその家を出ることになった。
それは親が環境がよくない、そのせいで変な物を見るんだ。そう思ったらしい。だから、田舎からがらりと環境が変化した都会に私は越した。
今思えば親も周りの目が限界だったのだと思う。私は周りの目を気にせず外でも妖怪と接してきたから。
「…鎌鼬。私はここを離れることになりました。」
家を離れる前日に鎌鼬にそのことを伝えた。
「は?何言って…」
「鎌鼬。必ず戻ってきますから、よかったら私に貴方の絵を描かせて下さいませんか?」
「…………………絵?」
「はい。」
まだ鎌鼬は何か言いたそうだったが、私が鎌鼬の目を見つめた為、鎌鼬は言葉を飲み込んだ。
それほど私は真剣に鎌鼬を見つめていた。
私は鎌鼬の前に立つと棚からパレットを取り出す。
そして私は鎌鼬との残された時間を絵を描いて過ごした。自分の気持ちを筆にのせて。
「鎌鼬…。この絵あげますから、私のこと忘れないで下さい。」
完成した絵はとても上手とは言えないけれども、絵に込めた気持ち、想いはとても大きい。
「下手くそだな。」
「ははは、絵なんて描きませんからね。練習しときます。」
「じゃあ俺が1番?お前から絵をもらうの。」
「…そうですね。」
「ありがとう。嬉しい。」
鎌鼬が笑うから、余計離れたくなくなる。本当は行きたくない。ずっとここにいたい。
なのにそれを周りが許さない。
そして私は、鎌鼬とこの家から離れていった。
必ず戻る。
そう決めて…。
そんな懐かしい夢を見た。
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鎌鼬(かまいたち)
つむじ風に乗って現れ、鎌のような両手の爪で人に切りつける。鋭い傷を受けるが、痛みはない。地方によっては3人組だったりする。
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