プロローグ

3/3
前へ
/9ページ
次へ
鎌鼬と出会って2年。 私は、親に連れられその家を出ることになった。 それは親が環境がよくない、そのせいで変な物を見るんだ。そう思ったらしい。だから、田舎からがらりと環境が変化した都会に私は越した。 今思えば親も周りの目が限界だったのだと思う。私は周りの目を気にせず外でも妖怪と接してきたから。 「…鎌鼬。私はここを離れることになりました。」 家を離れる前日に鎌鼬にそのことを伝えた。 「は?何言って…」 「鎌鼬。必ず戻ってきますから、よかったら私に貴方の絵を描かせて下さいませんか?」 「…………………絵?」 「はい。」 まだ鎌鼬は何か言いたそうだったが、私が鎌鼬の目を見つめた為、鎌鼬は言葉を飲み込んだ。 それほど私は真剣に鎌鼬を見つめていた。 私は鎌鼬の前に立つと棚からパレットを取り出す。 そして私は鎌鼬との残された時間を絵を描いて過ごした。自分の気持ちを筆にのせて。 「鎌鼬…。この絵あげますから、私のこと忘れないで下さい。」 完成した絵はとても上手とは言えないけれども、絵に込めた気持ち、想いはとても大きい。 「下手くそだな。」 「ははは、絵なんて描きませんからね。練習しときます。」 「じゃあ俺が1番?お前から絵をもらうの。」 「…そうですね。」 「ありがとう。嬉しい。」 鎌鼬が笑うから、余計離れたくなくなる。本当は行きたくない。ずっとここにいたい。 なのにそれを周りが許さない。 そして私は、鎌鼬とこの家から離れていった。 必ず戻る。 そう決めて…。 そんな懐かしい夢を見た。 ___________ 鎌鼬(かまいたち) つむじ風に乗って現れ、鎌のような両手の爪で人に切りつける。鋭い傷を受けるが、痛みはない。地方によっては3人組だったりする。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加