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「アナタは、五日後に死にます」
暗い病室、消毒液の香り、白いベッド。見飽きていた景色がぼくの瞳に映った。
敏感になった耳と鼻。ことさら、この病室に限ればわずかな空気の乱れすら寝ていても分かるほどだ。
だいたいは看護師さんが笑顔で点滴を変えてくれたり、味のしない病人食を持ってくるくらいしか来客はないのだけれど。
その看護師さんも、長年ぼくの身の回りの世話をしてくれているけれど、最近はぼくを面倒くさそうなモノを見る目で見てくる気がしてならない。しかし、ぼくという存在は病院にとって絶好の金づるなのだろう。
ぽつんとぼくだけがいる空間。
――だった。
だから、ぼくは戸惑いを隠しきれなかった。なにせ、突然……目の前に女の子が現れたからだ。正確には、空気の乱れと嗅いだことのない香りがして目を覚ますとそこに女の子がいた、という感じだ。
真っ先に思ったのは『誰』、というより『どうやって』だった。
ぼくの探知能力が正確なら、女の子はドアから入ってきたのではなく、いきなりぼくが寝ているベッドの隣に現れたのだ。
次は驚きだった。来客が少ないぼくに女の子が、それも明らかに日本人ではない風貌の見知らぬ女の子が立っていたからだ。
紫色の髪は女の子の生え際から全方向に滝のように流れており、癖っ毛なのかウェーブして腰の辺りまで伸びている。
力強い視線をぼくに向ける双眼は金色。キリッとした目には長い睫毛が生えている。唇はほんのりと桜色で、触れれば崩れてしまいそうなほど柔らかそうだ。
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