死神さん

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 ぼくが本当にバカだと思ったのは、気づいた反動で身体を起こした際に見てしまったからだ。  杖だと思っていた、死神さんの抱えていた棒の先に……黒光りする鋭利な刃物がついていたのを。  鎌ですねこれは。冷静に判断できてしまった自分が怖いが、初めから見える位置に刃物があったらぼくは真っ先にナースコールをしていただろうから、死神さんはその辺りを見越して刃物をベッドの下に隠していたのかと思うと、なんとも『親切だなあ』と感じてしまう。  ぼくの場合、ナースコールというのはもはや『死亡通告』に等しいから、イタズラでさえやってはいけないのだ。一般患者でもイタズラはダメだろうけど。  とはいえ、死神さんである。ぼくはもうちょっと……その、ドクロをじゃらじゃら下げた陰湿そうな化物みたいなのを想像していたから、正直、面食らっている。 「はあ、そうですか。五日後に……へえ」  ぼくが無関心そうにそう言うと、死神さんのきれいな眉がつりあがった。小さな口もムッとしている。 「……信じるんですか? 死神ですって、いきなり言われて」  変なことを言う死神さんである。死神さんはみんなこんな感じなのだろうか。 「じゃあウソなんですか?」 「ウソではありません。私は死神です」 「じゃああなたは死神さんです。本人がそう言っているなら間違いないです」 「……アナタ、変わってますね」  死神さんはぼくを変な人と断定したようだ。どうしてだろう。
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