死神さん

6/9
前へ
/177ページ
次へ
 ぼくが口を開く前に、死神さんは困ったような顔をしてぼくに奇妙な眼差しを向けた。 「普通、死神だなんて言われたら疑うものですし、信じたとしても余命が五日なんて言われたら発狂するか、嘆き悲しむかすると思うのですが」 「へえ、普通はそんなリアクションをするんですか。ぼくもした方がいいですか?」  ぼくがそう言うと、死神さんは嫌そうな顔をしてぼくを睨み付けた。冗談言ったわけじゃないんだけどなあ。  ぼくは染み一つない真っ白な天井を見上げた。 「余命宣告なんて百回単位で受けてきましたからね。もう慣れてます。でもまあ、死神さんが五日って言ってるんだから、今回は間違いないのかな……」  ぼくは『明日は雨か、面倒だな』くらいの気持ちで死神さんの質問に答えた。 「……怖くはないんですか? 私は死神ですよ? 五日後に死ぬんですよ?」  ホントに変な死神さんだ。ぼくは死神さんを真似て困ったような顔をした。 「おかしなことを言う死神さんですね。あと五日"も"生きられるんでしょう? むしろ嬉しいくらいです。それに、死神さんはぼくの命を回収しに来ただけで殺しに来たわけじゃないんでしょう? だったら怖いことなんて一つもありません」 「……やっぱり、アナタは変な人です」  死神ブラックジョーク。目の前のあなたの方がよっぽど変です。 「それで、一体ぼくはどうすればいいんですか? 命を受け取りに来ただけならわざわざ姿現す必要ないですよね。ぼくが死んだあとにこっそり回収すればいいんですし。死神さんのルールとか分からないんで予想ですけど」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加