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「……アナタはエスパーか何かですか。ここまで冷静沈着だと死神の立つ瀬がないです」
それは申し訳ないことをしました。すいません。
「アナタの言う通り、私が姿を現したことには理由があります。そこで、アナタに尋ねたいことが一つあります」
「はい、なんでもどうぞ」
「アナタの願いは、なんですか?」
……ぼくの願い?
「それは、何かのアンケートとかですか?」
ぼくの質問に対し、死神さんは首を横にふった。今度はぼくが冗談を言ったわけではないと思ったのだろう、普通の対応だ。もちろん冗談は言ってない。
「……冥土の土産、という言葉を知っていますよね」
ぼくは首肯する。
「冥土の土産は、元々は死神が生者に与える手向けのことでした。命をろうそくに例えて、最期の燃え上がり、ともいいますが」
「へえ。願いはなんでもいいの?」
「一つ、延命はできない。二つ、他人に危害を加える願いはできない。三つ、他人のための願いはできない。この三つに反しなければなんでも」
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