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あるのはいくつかの段ボールとタンス。どうせもう帰ってくることは無いだろうから、この際整理でもしておこうかな。ああ、そうだ。ついでに聞いておこう。
「ねえ、死神さん。ちょっと気になってたんだけど、もしかしてお願いって何回でもできたりする? あの時『一つだけ』とは言ってなかったからさ」
「? ええ、まあ。今まで、私は一度だけ願われたあと放置されていたので、そんなことはありませんでしたから忘れていました。私と余命を共にしようなどと願ったのはアナタが初めてでしたし」
「そう? なら荷物を亜空間かどこかに置いておいたりできる? 大きな荷物背負って街を歩くのはいろんな意味で嫌だから」
「できますけど、何を入れるつもりで……?」
「服とか……かな」
ぼくはずっと病院の服しか着てこなかったから、いわゆる『おしゃれ』というやつをやってみたい。まあ、家にはぼくの服なんてないから、街に買いに行かなきゃならないけど。今着てる服も、後見人になってくれた先生にもらったものだし。
「だから、街に買い物に行ったときにそれを収納してもらおうかと――」
段ボールを開けたぼくの手が止まった。親戚に処分された部屋に段ボールがある時点で何かおかしいとは思っていたけど、これは……。
ぼくは一つ目の段ボールを退かせると、二つ目の段ボールに手をかけた。
これもか……。やっぱりそういう扱いになってたのか。
ぼくは四つあった段ボールを全て開け、最後に開けた段ボールに入っていた服を取り出した。
カジュアルという言葉からかけ離れた、形式ばったデザイン。胸に縫い付けられた紋章。
見紛うまでもなく、学校の制服だった。
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