恋人の死

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「最近あんま食べてなくて…」 「だめだよ。不健康。 このあと何か美味しいもの食べにいくよ?」 真由が紅茶を啜る。 あたしは何も言わなかった。本当に何も食べたくないことを伝えるにはどうしたら良いのだろう? 少し間があいてから真由が口を開いた。 「…何でお葬式に来なかったの?」 「…だって」 「マコト君が一番来てほしかったのはアンタだよ?」 「……」 「どうして見送ってあげなかったの?」 あたしが黙っていると真由が、まぁ責めても仕方ないけど…と言った。 「ねぇ、あゆ。 明日マコト君に会いに行こう?」 「え?」 「お墓参りだけど。ケンさんと一緒にね」 「…なんだ、そっか…」 本当にもうどこにもいないんだ。 力が抜けた。 本物に会えると思っていたのにな…。 「マコト君がいないと淋しいのは、すごくよくわかるよ。 みんな淋しいよ。 でも、残された者達は残された者達でやっていくしかないのー」 突き付けられた現実の破片がガラスのように胸に突き刺さった。痛いなんてものじゃない。でも一番苦しかったのは、電車の下敷きになってしまったマコトだ。 「そうだね…」 「だから、いつまでも意地張らなくて良いんだよ。 あゆは独りじゃないから。あたしのことをもっと頼っても良いから…」 「…ありがとう」 その時、自分の頬が涙で濡れたのが分かった。私、本当はずっと泣きたかったんだ。この涙はね、辛い現実を受け止めて、これからも生きていくための力。辛くても、私は悲しい現実を受け止める。 思えば、あたしは意地を張りすぎていたのかもしれない。 マコトはもういない…。 もう、いないんだ。 マコトが生きてた時は、いなくなるなんて思いもしなかった。 もっともっと生きてほしかったよ。 美味しいものを食べたり、お酒を飲んだり、素敵な景色に出会ったり、ぐっすり眠ったり、ゆっくりお風呂に入ったり…。平凡な日常にある一瞬の煌めきを、あなたと一緒に楽しみたかったです。 そっちに逝くには早過ぎました。 最後にお別れがしたかったよ…。
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