序章

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「いいのよ。実際、毎年誰がどの生徒を教えるのかは私とあと数人の先生で決めているのよ。条件付きの生徒を教えるのは今回が初めてですけどね」 「……条件つき、かぁ」  エルフィールはため息混じりに呟いた。  一度は失格だと思っていたから条件付きでも合格したことはうれしかった。  でも、イングリドの話を聞いているうちに果たして自分に出来るかどうか、だんだん不安になっていくのが分かった。  イングリドはエルフィールのそんな心況を察したのか、にこやかに笑った。 「元気を出しなさい。錬金術師になりたいんでしょう? ちょうど私が個人的に管理している空き家があるから、そこに住むといいわ。必要最低限の道具は揃っているから、あとはあなたの頑張り次第よ。これから挽回する機会はいくらでもあるのですから」 「……あたし、自分が錬金術師になりたいのかどうか実はよく分かってないんです。たまたまあたしを助けてくれた人が錬金術師だっただけで…。ただ、誰かが私を頼りにしてくれる。そんな人になりたいんです」 「それでいいのよ」
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