序章

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 §1  茜色の空。  ゆらゆらと揺らめきながら西の地平に陽が沈む。  鐘の音が厳かに鳴り響くと、シグサール王国王都ザールブルグに夜の帳が降りていく。  家々の窓から明かりがもれ始め、平和な一日に感謝しつつ安らかな晩餐が始まる。  ザールブルグの、ごく一般的な夕暮れの風景。  だが、今回の鐘の音には特別な意味が込められていたのだった。  鐘がつり下げられている塔、王立魔術学校「第9アカデミー」のシンボルタワー。  鐘の音はそのアカデミーの入学試験が終了した事を表しているのだ。  アカデミーとは、魔術や錬金術といった新しい学問を教えるための学校である。
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