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少女は夕日の中、目の前にいる聡明そうな女性を見上げた。
「あの……」
「もう日が暮れてきたわよ。いくら街の中が安全でも若い子が夜遅くまでふらふらしてるのは感心しないわね」
女性は緑色の髪をかきあげた。
「……あたしこの街の人間じゃないんです、だからどこにも行くところがないんです。アカデミーの試験を受けに来たんだけど落っこちちゃって……明日、日が昇ったら故郷の村に帰ろうと思っています」
彼女は悲しそうにそっと答えた。普通に喋ろうとすると、また涙があふれてきそうになるのだった。
「そう……それは残念だったわね……。あなたお名前は?」
「エルフィール。エルフィール・トラウム」
「エルフィール……ね」
そう言いつつ、彼女は手に持っていたファイルを開き、紙をめくりはじめた。
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