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「あんたのせいで値引き交渉失敗したじゃない! どうしてくれんの!」
結局コイツに町外れの丘にまで引っ張られてしまった。すげえうぜえ。どうしてくれよう。
「……けっこう強気のようね」
いや、おれはめんどくさいから何も言わないだけだが……しゃーない。うん、もうめんどくさい。早くこの茶番がおわってくれれば、俺はどうだっていい。
「あんた気に入った。一緒に旅してやってもいいよ」
――は? 何言ってるんだ? 何照れてるんだ。まさか……え? え、そんなわけない。うん、俺からみて最悪な性格なんだぜ。値引き交渉(しかもたかだか10G程度)する女なんて……なあ。
と、ふと俺は丘の下を眺めると瓦礫に隠れて大地が親指を下に突き出していた。まて! これは愛の告白なんかじゃねーぞ! だって俺返事してねえもん!
「……べ、別にあんたのために付いていこうと思うんじゃないんだからねっ?」
うわー典型的ツンデレだわー、俺の苦手なタイプ。油だ、油。俺が水ならあんたは油。それくらい嫌い。
「……わかった、で名前はなんと?」
とりあえず丁寧に。一応女性だからな。それくらいマナーはちゃんとしているさ。
「あたしの名前は霧島明日奈。アスナって呼ばれてる」
そうか、まさか自分からあだ名を打ち出すとは。とアスナの目を見ないで思った。まあ、とりあえず握手はしておこう。ばちは当たるまい。
「……えっ?」
困った表情を見せたが、すぐに手をだした。なにこのゲーム的な展開。まさか俺これ終わったら死ぬんじゃあるまいな。というかすごいてれてる。リア充ライフの始まりだろうか。大地の方を見るとハンカチ噛み締めて泣いていた。まず鼻をかめ、鼻を。
……まあ、これで俺はこの脱出作戦の決行中、飽きることはないだろう。俺はそんなことを思ったのだった。
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