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さて、ところでここまで戻ってきた。どこかといえば第一層の宿屋だ。第一層は優しい。なんと無料だ。さすがだ、無料はいい。ただし、部屋が埋まりかけということもあるが、実際は皆ここを脱出しようとしている。
「って思うでしょ? ……外見てご覧よ」
アスナの言葉を聞いて、俺は外を見てみた。すると、どうしてだろう。脱出していこうとする人間は、一割にも満たない。残りの九割はここで(ここに理由もなく閉じ込められたことも忘れているかのように)過ごしていた。
「……まあ、当たり前かもしんないよね。外は都会の喧騒で、理不尽なことにストレスを感じて嫌になる日々。だけどここじゃ、限られた人間と共同生活。生活は新石器時代に逆戻り。ストレスなんて感じないでしょうね。……どっちを選ぶかは明白だと思うけど?」
「……まさかあの『マスター』とやらはこれを加味していて……」
「どーだろうね? もしかしたらそいつは世界の科学技術を凌駕したなにかを持っているのかもしれないし」
「……なんで、解るんだ?」
「あたしはね、考えるより行動する派なの」
なんとなくそれは解る。
「それで、一層に侵入してみた。二層にあわよくば進めれば……って感じで」
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