第一層 クラウド・ビギニング

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 何を言ってるんだ、こいつは。いきなり、『迷宮が生きている』だって? そんなわけないだろ。 「ほんとうよ。まるで疑ってないようだけど。あそこは目印を付けても無駄。生きてるように移動する。仕組みを変えていくの」  嘘だろ、ふざけるな。そんな迷宮が、存在するだと? 現実の科学技術じゃ作れないじゃないか! 「それだから、マスターとやらはこの世界の科学技術を超越してるんじゃないか、って言いたいのよ。……ま、脱出が出来ればそれも少しくらい明かされそうな気もするでしょ?」 「なんでだ?」 「だって、最初からこんなのなら、次はもっとすごいはずでしょう? この迷宮は恐らく“クリアできないように”設定してあるなにかよ。だけど……それを私たちがクリアしてしまったとしたら?」 「……マスターとやらは目の色を変えるだろうな。人間に対して」 「そう、そしてそいつは必ず姿を現すはずよ。そして……そこを狙う」 「狙う、って……まさか倒す気でもあるのか」 「当たり前じゃん」  質問した俺が馬鹿だった。
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