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エーテル・ラビリンスの実質の入口はクラウド・ビギニングの中央広場にある。とても小さな祠のようなものだ。そこに俺達はそれなりの装備と、それなりの食料を持ってやってきた。
「さて、ついに行くわよ! 目指すは第二層!」
なんか展開が遅い気がするのは気のせいだろうか。朝飯に食ったカツサンドの味がやけにうまかったことを思い出しつつ俺は携帯電話を眺めてみた。当たり前だが、圏外である。だけど、電気と充電器があった(もしかしたら、この状況を想定していた?)ので、充電して利用している。見ているのは――写真だ。家族の写真だ。
……いつ戻れるのだろう。俺はそう思って項垂れた。だが、アスナと大地はそこまで俺のことを心配してくれていない。彼ららしいのでもあるが、俺はそれの方が気が楽だ。相手にも、自分にも、迷惑をかけないで済む。
「……どうした、浮かない顔をして」
アスナの声で俺はふと現実へと回帰した。そうだ、『いつ戻れるか』解らない世界のことなんて、今は考えてはいけないのだ。俺は、目の前のこの世界『エーテル・ラビリンス』について、考えなくてはならない。そうでなくては、俺は生きていけないのだから。
「向かうぞ」
入口はエレベーターというよりかは瞬間移動装置(テレポーター)に近い。テレポーターとは簡単なことで座標Aから座標Bまで世界を歪めて一致させる。メビウスの輪に近い感じだろうか。
つまりはそれを利用して、エーテルラビリンスのラビリンスエリア(命名:俺)へと入っていく。シティーエリアとはこれで行き交いできるらしく、つまりはテレポーターがあれば、帰ることが可能である。
「……ああ、行こう」
そして――俺達はラビリンスエリアへと向かうテレポーターに乗り込んだ。
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